一枚のレセプトの向こうに、クリニックの一日がある
1993年にレセプト代行業を始めてから、30年以上が経ちました。当時、私は薬品会社の開業支援チームを退職したばかりで、レセコンインストラクターとして培った知識だけを頼りに、手探りで仕事を始めました。同業者もほとんどおらず、真似るお手本もない。失敗と是正を繰り返す日々でした。
「代行」ではなく「伴走」だと気づくまで
始めたばかりの頃、私はこの仕事を「請求業務を代わりにやる仕事」だと思っていました。正確に、期日までに、漏れなく請求する。それができれば十分だと。
その考えが変わったのは、あるクリニックの請求データをお預かりしたときのことです。査定や返戻が続いていた月のデータには、いつもと違う特徴がありました。記載の抜けが増え、算定のパターンが不安定になっている。理由をお伺いすると、ベテランのスタッフさんが退職され、残った方が一人で抱え込んでいる最中でした。
数字は、結果でしかありません。その向こうには必ず、そのクリニックの一日があります。誰がどんな順番で、どれだけの余裕を持って業務にあたっているのか。そこに手を入れないかぎり、翌月も同じことが起こる。この仕事は「代行」ではなく「伴走」なのだと気づいたのは、このときでした。
長く努めた者でなければ見ることができない情景が、必ずある。
査定・返戻が多いクリニックには、必ず理由がある
ご相談をいただいたとき、私たちが最初にお伺いするのは点数や算定のことではありません。今どなたが何を担当されていて、どこで時間が足りなくなっているのか。マニュアルはあるか。新しく入った方が質問できる相手はいるか。
請求の精度は、知識の量だけで決まるものではないと考えています。確認する時間が取れているか、迷ったときに立ち止まれる体制があるか。加算の要件は年々複雑になっていますが、取りこぼしの多くは「知らなかった」ことよりも「確認しきれなかった」ことから生まれています。
だからこそ、点検と教育、そして業務フローの整理は、ひと続きのものとしてお引き受けしています。どれか一つだけを直しても、しばらくすると元に戻ってしまうからです。
医事課が変わると、クリニックの空気が変わる
医事課は、患者さんが最初と最後に必ず接する場所です。受付での応対、会計での説明、そのときの表情。スタッフに余裕がないと、それは驚くほど正直に伝わってしまいます。
反対に、業務が整理されて一人ひとりが自信を持てるようになると、窓口の空気は目に見えて変わります。「この処置はこの算定でよろしいですか」と、スタッフの方から先生に確認が入るようになる。属人化が解け、誰かが休んでも業務が止まらなくなる。そうした変化のあとに、査定率や継続率といった数字がついてきます。
これからも、縁の下で
2009年に法人化してからも多くのご縁に恵まれ、関西を中心に100院を超える医療機関のお手伝いをさせていただきました。開業当時からお付き合いが続いているクリニックも少なくありません。
私たちが手掛けるレセプト支援とスタッフ教育は、クリニック運営に欠かせない、けれど表には出にくい仕事です。それでいいと思っています。ドクターが安心して診療に集中できる環境をつくること。そのために、これからも縁の下で伴走してまいります。
もし今、医事課のことで気にかかっていることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。「まだ相談する段階ではないかもしれない」という状態でも構いません。お話をお伺いするところから始めさせていただきます。